1996.09.05日刊新周南●徳山●
同地区の敬老会は以前はアトラクションが始まると帰ってしまうお年寄りが多く、何とか足を引き止めようと米藤さんら地域の芸達者が集り、地区のビデオクラブや市文化振興財団の植木容子さんも協力、第1回は「切られ与三」を上演した。「八千代座」は昔、櫛ケ浜にあった劇場の名前で「お年寄りが親しみやすいように」と名づけた。 昨年は舞台を江戸から櫛ケ浜の堀川に移した「三人吉三」。直前に亡くなった地区コミュニティ推進協議会長、石丸勝さんの追悼の気持ちも込めて台詞に石丸さんも登場させた。主人公の三悪人のやりとりなど本格的な歌舞伎に一歩も二歩も近づき、敬老の日以外にも出番が増える人気だった。 今年は2幕合せて40分の大作「一本刀土俵入」。舞台はもちろん櫛ケ浜。腹を空かして行き倒れになろうとしていた相撲取りの駒形茂兵衛は酌婦のお蔦に助けられ、有り金全部にかんざしや櫛まで添えて渡される。2幕目では横綱にはなれず渡世人姿。ヤクザに追われていたお蔦一家の苦境を救って恩を返し、最後は見事な土俵入りを披露するというお馴染みの筋書きだ。 茂兵衛を堂々と演じるのは鼓海浩之進こと有馬浩さん。お蔦は魚谷二三子さんの鼓海二三之丞、1幕目で茂兵衛と争う船戸の弥八は中村誠さんの鼓海誠之丞。2幕目の船印彫(だしぼり)辰三郎と2役をこなす。2幕目にはお蔦の娘のお君役として子役の櫛浜小4年、玉野友都ちゃんも登場する。友都ちゃんの祖母、玉野千津子さんが三味線。 そのほか2幕目のイワシの北は今年が初登場の鼓海真州美こと下松市の三明真州美さん、堀下げの根吉が小林淳子さんの鼓海淳之助、波一里儀十が米藤千津子さんの鼓海八千代という配役。4月から練習を続けてきたが、公演が近づくにつれて櫛浜公民館での練習にも熱が入り、米藤さんも「今年はせりふが長く、仕上がりが遅い」と懸命。着物姿で小道具のドスなどを手に、内山さんの指導で微妙な言い回しなどのけいこを重ねている。 敬老会は午前9時半から始まり、八千代座歌舞伎の出番は11時ごろ。このあと23日には東和町沖家室の泊清寺で開かれるふか地蔵祭りでも本堂で奉納公演することが決まっている。 1996.09.17日刊新周南●徳山●
八千代座歌舞伎は下松市の花岡歌舞伎の指導者でもある内山慧さんが脚本と演出を担当して3年前から地区敬老会で公演し、福祉施設も訪問して喜ばれている。 この日も幕が開くと見事な茶屋の場。鼓海二三之丞の酌婦、お蔦が2階から行き倒れの相撲取りで鼓海浩之進が演じる駒形茂兵衛に財布にかんざしも添えて与える場面、2幕目では一転して茂兵衛が渡世人姿でさっそうと登場、お蔦一家を助ける…。花道も作られ、三味線も流され、子役の鼓海友都さんも可愛く、芝居が始まると全員が舞台に引きつけられていた。 このほか敬老会の式典では櫛浜小1年、増田真央ちゃんと6年、倉重智行君が敬老の日にちなむ作文を発表し、演芸の部として櫛浜小金管バンドの演奏、合唱などがあった。 1996.12.17日刊新周南●徳山●
敬老会の上演をめざし、花岡歌舞伎の主宰者、内山慧さんの指導を受けて人気を呼んでいる同歌舞伎の訪問は1年ぶり。リズムに合せて手拍子をとったり、いっしょに歌いながら喜ぶお年寄りの姿も多く「一本刀土俵入」の幕が開くと、見事な茶屋の場が現われ、盛んな拍手。 腹を減らした相撲取りの茂兵衛がやくざに絡まれているところを、茶屋の酌婦お蔦に助けられ、横綱になって片屋入りを見てもらう約束をする第1幕、お蔦の亭主がやくざに追われているところへ、渡世人となった茂兵衛がお蔦親子を助けに現われ、土俵入りならぬ「しがねえ姿の横綱の、土俵入りでござんす」の名せりふで締めくくる第2幕とも見事で、子役を演じた鼓海友都さんも人気を集めていた。 脚本、演出を担当した内山さんはこの日も舞台のそでに控え「味を出すため、今回は周南の方言に置き換えず、台本通りのせりふで演じました」と、お年寄りたちの笑顔に嬉しそうだった。 |