10月17日のことです。
オランダ船エリザ号のスチュアート船長は、出島にいるオランダの人たちが神崎に見送りにきて、長い航海の無事を祈って、楽しく話し合ったことを思い出し
「何とか今度も無事にバタビアにつけば良いな−」と思いながら、明日の出発のため碇をあげ、静かに風を待っていました。
ところが夕方より、強い西風が吹き始め、波は高く船をもち上げ、雨も恐ろしいほど土砂降りになってきました。
水夫たちが、あれよあれよと思う間に、夜中にはとうとう暴風雨になってきました。
船は高鉾島脇の唐人ケ瀬に乗り上げてしまいました。
この高い波と風雨の中、船長はこれは大変なことになったとウウノスという水夫に
「このままでは大事な荷物と水夫たちの命が危ない。命がけだが出島に助けを頼んできてくれ」と命じました。
水夫ウウノスは、もうこれで自分は死ぬかも知れないと思いましたが
「ハイ!」と命令を受け、ボートをおろし、必死で出島をめざし、こぎました。
そして命からがら、たどり着き出島に船長の命令を伝えたのです。
一方エリザ号は、風向きが変わり、とうとう高鉾島脇の唐人ケ瀬にのし上げられ大きく傾きそうになったので、スチュアート船長は、しかたなく3本のマストを切り倒しました。
そして水夫たち全員で滝のように流れ込む海水を汲み上げました。しかし船は沈むばかりです。
今にも沈みそうになったその時、やっと水夫ウウノスの連絡で助けにきた長崎奉行所の役人たちは、大事な荷物を少し運び出し、水夫たちを助け出しました。
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