ところが夕方より、強い西風が吹きはじめ、波は高くなり、船は上下左右に揺れ、雨も恐ろしいほど土砂降りになってきました。乗組員一同あれよあれよと思うまに、夜中にはとうとう大嵐になりました。そしてエリザ号は浅瀬に乗り上げてしまいました。
この高い波と風雨の中、スチュアート船長は、このままでは積荷がダメになり、乗組員の命も危ないと考え、水夫ウウノスに「オランダ商館に助けを求めてきてくれ」と命じました。
水夫ウウノスは、もうこれで自分は死ぬかもしれないと、心の中で決心し、雨風の吹きすさぶ中、必死で出島をめざし、小船を漕ぎました。そして命からがら、出島のオランダ商館にたどりつき、船長の命令を伝えたのです。
一方、残されたエリザ号は、風向きがかわり、大きく傾きそうになったので、スチュアート船長は、仕方なく3本のマストを切り倒すように、水夫達に命令しました。
そして全員で船の中に滝のように流れ込む海水を汲み上げました。船が今にも沈みそうになった時、やっと長崎奉行所の役人達が到着しました。
そして大事な荷物を一部運び出し、水夫達を助け出しました。それを待っていたかのようにエリザ号は、海の底へと沈んでいったのです。
次へ