くまげ郷土史会発行「郷土史熊毛」第4号巻頭論文

長崎沖でオランダ沈船を引き揚げた村井喜右衛門

会友 櫛ケ浜在住 竹島美雅(徳山地方郷土史研究会会員)

はじめに

郷土史熊毛4号
郷土史熊毛4号
三丘徳修館第3代館長村井来山(嘉右衛門正純良甫)の祖父喜右衛門信重は、今(1999)から200年前の寛政11年(1799)長崎沖のオランダ沈船を引き揚げ、その技術と心意気は、国内はもとよりオランダ・アメリカまでも知られることになった。本文においては、その偉業について述べる訳であるが、まず三丘にその足跡を残すことになった孫嘉右衛門来山及び喜右衛門の前後について記述しておく。
喜右衛門については、徳山地方郷土史研究会において、平成5年には、喜右衛門研究の原点となる村井家文書を、古文書解読研究会の教材とした。そのときには藤井会長(くまげ郷土史会)も参加しておられた。

日蘭交流400年切手
日蘭交流400年記念切手
同8年5月21日から30日まで。徳山市立中央図書館との共催で図書館において喜右衛門展が開催され、その間の25日には、喜右衛門研究の第一人者である青山学院大学教授文学博士片桐一男氏の「櫛ケ浜の村井喜右衛門オランダへ鳴りひびく・沈船引き揚げでみせた技術と心意気」と題する講演会が開催された。
この時、村井惣本家及び酒場村井家にある多くの文書、書籍及び香焼町から提供の資料100点が展示された。

同9年11月片桐博士の著書『開かれた鎖国・講談社現代新書』が発刊され、その中に「紅毛沈船引き揚げ事件」が設けられた。
同10年5月23日、徳山地方郷土史研究会創立20周年記念行事の一つとして、引き揚げの模型が徳山市に寄贈された。中央図書館に展示されている。
喜右衛門については、前記『開かれた鎖国』及び作間鴻東『村井喜右衛門』(鴻東は山口県教育博物館初代館長・大正13年脱稿未刊の原稿を酒場村井洋一氏が印刷して喜右衛門展の参観者約600名に配った)に語り尽くされているが、藤井会長から請われるままに筆をとった。


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