1982.4.4matunotomo mail
題字

1982.4.2yol山口
杉玉
軒先に杉玉をつるす きえもん専務
造り酒屋のシンボル
緑色の杉玉 徳山で復活

 徳山市櫛ケ浜中町、村井酒造(村井辰雄社長)の軒先に、緑色の杉玉がお目見え、人目をひいている。杉玉は江戸時代から造り酒屋のシンボルになっているが、戦後は減る一方。そこで、同酒造のきえもん専務(34)が「店の雰囲気作りにぴったり、古きよきものを復活させよう」と、製作を思い立ち、このほど完成した。
 杉玉は杉の葉を束ね、球形にしたもので、酒林(さかばやし)ともいう。昔から酒おけは杉で作られ、酒造の神様、三輪神社(奈良県)のご神体が杉であることにちなみ、江戸時代から造り酒屋の看板代わりにかけていた。
 きえもん専務は、飛騨高山の民芸館で見たことがある杉玉の印象が忘れられず、3月初め、熊毛郡田布施町の杉林から軽トラック1台分の杉枝を運び、1週間がかりで作りあげた。幅約80cm、高さ約60cm。球を上からややつぶした形で、重さ約13kg。


杉玉
村井酒造正面

1982.3.25yamagutisinbun
杉玉
酒屋さんでは珍しくなった
杉玉が徳山市内で復活した
造り酒屋のシンボル
懐かしい“杉玉”復活

 徳山市内の造り酒屋がいまでは珍しくなっている杉の玉を酒屋の軒下につるす風習を復活させ、日本酒ファンを喜ばせている。
 昔から造り酒屋では看板代わりに杉の葉でできた酒林、別名“杉玉”を軒にぶらさげ、新酒のシーズンになると、新しい杉玉に取り替えていた。古い杉玉に代わって緑色の杉玉が店先に登場するのは新酒のできたことを伝える合図にもなっていた。この風習は江戸、明治のころ、盛んに行われたが、たる詰めから瓶詰めに変わるようになって酒屋の関心も薄れすたれていったという。
 この杉玉を復活させたのは、櫛ケ浜中町の村井酒造。新酒をしぼり終わる今月、若主人のきえもん専務(34)が青々とした杉玉を2階の軒下にかけた。直径5、60cmの玉で、一見“まりも”を大きくした感じ。きえもんさんが従業員と2人で仕事の合間に、竹を丸く編んでしんをつくり杉の葉を球状に幾つも刺していって1週間で製作。材料の杉は従業員が提供した。5年前に飛騨高山で見た杉玉や日本酒造組合中央会のPR紙の記事を参考にしただけで、見よう見まねで杉玉づくりに挑戦したが、わりに簡単にできたという。
 村井酒造は寛政10年(1798)に創業。きえもんさんは8代目で「戦前までは杉玉をかけていたようだ」と話す。風習復活は「伝統を見直すことによって、日本酒のPRになれば」という若主人のアイデア。

杉玉
杉玉をつるす きえもんさん
 酒屋の軒下にみずみずしい緑の杉玉がお目見えしたのは最近では本当に珍しい。江戸時代の造りの残る家の構えとよく合って、ちょっとした風情があり、道行く人の目を引きつけている。きえもんさんは「新酒のシーズン(12月〜3月)になったら、毎年新しい杉玉をつくりつるしていきたい」と話しており、村井酒造の年中行事としての風習を守っていきたいという。

村井喜右衛門